人口減少で年金原資は?
出典:国立社会保障・人口問題研究所
2006年12月に新しい将来人口推計が国立社会保障・人口問題研究所(社人研)から発表されました。
人口推移は予想通り前回推計値(2002年)よりも下方修正されています。日本の人口ピークは2004年頃だったようですでに減少傾向が現れています(図1)。低下割合は前回の低位推計と中位推計の低位よりが今回の中位推計となりました。また、老年人口(65歳以上)の割合は急激に増加し現在人口に占める老年人口割合は20%程度ですが2055年には40%に達する見込みです(図2)。
今回の人口推計を受けて現在の公的年金制度が維持できるか、議論を呼びそうです。少なくとも次に挙げる「所得代替率の50%維持」や「保険料負担の上限」については改訂に向けた議論が持ち上がるのではないでしょうか。
年金を取り巻く環境
- 所得代替率50%は維持できるか
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厚生労働省は現役時代に受け取っていた賃金に対して、支給される年金額を50%に維持することを年金設計の基本にしています。
公的年金制度で受取金額がどれくらいになるのかは、各個人が現役時代に払った年金額の多寡によって変わります。そこで受取年金額を金額で言うより割合で示そうというのが所得代替率という指標です。
ただ、この50%というのはあくまでモデル世帯のことで、厚生労働省が「モデル世帯」と言っているのは、男性が平均的な賃金(現在は年約560万円・税込み)で40年間働き、同い年で専業主婦の妻があるという世帯を考えています。
したがって、モデル世帯と異なる条件では所得代替率はもっと低くなることも考えられます。 - 年金保険料負担の上限設定は
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現役時代に支払う保険料は標準報酬によって決まります。この標準報酬には上限があって、この上限値を超える報酬がある人も上限値の支払額になります。現行では月収62万円が上限値ですのでこれよりも収入の多い人でも納める厚生年金保険料は月約9万円(本人負担は4万5000円)までに抑えられています。
ところが、この上限値は5年ごとに見直される予定で、今後人口推計がさらに下方修正されると上限値はさらに引き上げられる可能性が高いのです。
この上限値が引き上げられると従業員はもちろん、企業にも重い負担が強いられることになります。
現在の公的年金制度では2006年時点での「モデル世帯」の所得代替率は59.3%で2023年には50%になるように設計されています。ただ、計算の根拠となる国立社会保障・人口問題研究所の人口推計が変化するとその根底が揺らぐことになります。
現役世代にとっても老年世代にとってもお互いにハッピーになる制度を見つけだしたいものです。